液体のぬれ性やエマルションの安定性評価に欠かせない表面張力計には、測定原理や必要な機能に応じて様々なラインアップがあります。
ここでは測定原理やサンプルに応じた表面張力計の選び方とKRUSS社の製品についてご紹介します。

 

目次(クリックするとその項目へジャンプします)

 

表面張力と界面張力、静的と動的の違い

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表面張力とは、分子間力によって液体がその表面積を小さくしようとする力のことで、液体のぬれやすさを示す指標として用いられています。コップに水を注いでいくとこぼれる前に表面が少し盛り上がりますが、これは表面張力によって水が表面積を小さく保とうとしているためです。
身近な利用例として、ボールペンで使用されるインクには表面張力を下げるために界面活性剤が添加されており、表面張力を評価することによって文字が書きやすいようぬれ性の最適化がなされています。

表面張力は表面張力計を利用して測定することができ、最も一般的な測定原理であるウィルヘルミー法(プレート法)では、天秤に吊り下げた白金プレートを液体に接液させ、その時のぬれ荷重から表面張力を算出します。他にも、下部で紹介しているバブルプレッシャー法やペンダントドロップ法などといった測定原理があります。

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IDT

一般的に、表面張力は気/液界面の場合を指すことが多く、液/液界面の場合には界面張力と表現します。
界面張力の代表的なアプリケーションはエマルション(乳化)の評価で、例えば水と油など相互に混ざりあわない2液間の界面張力を測定することにより、乳化時の分散粒子のサイズや安定性の評価を行うことができます。

表面/界面張力の評価は静的動的の2種類に分けられます。
静的は界面活性剤が表面に吸着しきった状態(平衡状態)を、動的は界面活性剤が時間依存的に表面に吸着していく状態(非平衡状態)を意味します。
どちらを評価するかは、測定の目的やサンプル物性などに応じて決める必要があります。

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測定項目とアプリケーション

測定項目

説明

アプリケーション例
(静的)表面張力

液体自身のぬれ性を示すもので、表面張力が高いとぬれ広がりにくく、表面張力が低いとぬれ広がりやすいと考えられます。

界面活性剤の添加によって表面張力を下げることができ、静的とは界面活性剤が表面へ吸着しきってそれ以上表面張力が下がらない平衡状態を意味します。

液体と固体とのぬれの相性については、接触角計を用いて接触角を測定することにより評価することができます。

  • インク、塗料
  • 洗剤
  • 化粧品
  • 飲料
    など
(静的)界面張力

エマルションのように相互に混ざり合わない液/液界面のぬれ性を示すもので、一般的には、界面張力が高いと分散体の安定性が低く、界面張力が低いと分散体の安定性が高いと考えられます。

表面張力と同様、界面活性剤の添加によって界面張力を下げることができ、静的とは界面活性剤が界面へ吸着しきってそれ以上界面張力が下がらない平衡状態を意味します。

なお、測定の際は、乳化後のエマルションそのものを測るのではなく、乳化前の2液間(例えば水vs油)の界面張力を測定します。

  • エマルション全般
    など
動的表面張力

表面への界面活性剤の吸着が進むほど表面張力は低下していき、その現象は界面活性剤の濃度や分子量にもよりますが、多くはミリ秒~秒スケールで起こります(場合によってさらに広い範囲もあります)。
この時間に応じてダイナミックに変化する非平衡状態のことを動的と言います。

例えば、インクジェットインクは、プリントヘッドから液滴が吐出された瞬間に界面が形成され、その後ミリ秒スケール(さらに短いこともあります)で基材へ着弾します。この非常に短い時間でどれだけ界面活性剤の吸着が進み表面張力が低下したかがぬれの挙動に深く関わっており、静的ではなく動的表面張力による評価が重要とされる代表的なアプリケーションとして知られています。

  • インクジェットインク
  • 農薬(特に散布タイプ)
  • インク、塗料
  • 洗剤
  • 化粧品
    など
動的界面張力

エマルションの生成時には連続層の中に分散相である液滴が形成されますが、この時、界面張力の大小が形成される液滴のサイズに寄与します。
エマルションの生成方法にもよりますが、液滴は短時間のうちに形成されるため、その限られた時間の中で界面活性剤が界面へ吸着して界面張力を低下させるほど小さな液滴が形成されると考えられます。
表面張力と同様、この時間に応じてダイナミックに変化する非平衡状態のことを動的と言います

  • エマルション全般
    など

 

測定原理と特徴

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表面/界面張力はサンプルや目的に応じていくつかの測定原理があり、さらに同じ測定原理であっても機能によって複数の機種が存在します。
下記表では、表面/界面張力の各種測定原理とその特徴、対応機種などをまとめています。

測定原理

表面or界面

静的or動的

特徴 代表装置

ウィルヘルミー法
(プレート法)

表面&界面

静的

静的表面張力を測定するための最も一般的な方法で、天秤に繋いだぬれ長さが既知の白金プレートを液体に接液させ、その際のぬれ荷重から表面張力を算出する。測定子は白金ではなくガラスを用いる場合もある。液液界面で測定することで界面張力を測定することもできる。

メリット:液体の密度値が不要、比較的高粘度に対応(最大数万mPa・s)。
デメリット:経時変化は数十秒スケールと長い範囲のみ。

Tensiio

デュヌイ法
(リング法)

表面&界面

静的

天秤に繋いだぬれ長さが既知の白金リングを液体に接液させ、その際のぬれ荷重から表面張力を算出する。液液界面で測定することで界面張力を測定することもできる。

メリット:ラメラ長測定が可能。
デメリット:液体の密度値が必要、測定子が変形しやすい。

Tensiio

バブルプレッシャー法
(最大泡圧法)

表面

動的

口径が既知のキャピラリから液中に空気を送り込み、キャピラリ先端で半円状の気泡が生成される際の最大圧力から表面張力を算出する。半円状の気泡が生成されるまでの時間を制御することにより、ミリ秒スケールの動的表面張力を測定できる。

メリット:表面寿命(界面形成時間)数msという非常に短い動的表面張力を測定可能。
デメリット:液体の密度値が必要(ただし装置による)、高粘度の液体が苦手(最大100mPa・s程度)

BP100

BPT Mobile

ペンダントドロップ法
(懸滴法)

表面&界面

静的

ニードル先端に形成した滴の形状をカメラで解析し、表面張力を算出する。別の液中で滴を形成することにより、界面張力を測定することもできる。

メリット:必要液量が少ない(表面張力→1ml以下、界面張力→20ml程度)、秒スケールの経時変化の測定が可能、繰り返し測定が容易で迅速
デメリット:液体の密度値が必要、高粘度の液体が苦手(最大数千mPa・s程度)

DSA25(DSAシリーズ)
スピニングドロップ法

界面

静的

高密度層で満たしたキャピラリ内部に低密度層のドロップを形成し、キャピラリを回転させて変形したドロップの形状をカメラで解析することで界面張力を測定する。

メリット:1mN/mを下回る超低界面張力を測定できる、必要液量が少ない(数ml程度)
デメリット:液体の密度値が必要

SDT
ドロップボリューム法

界面

動的

液中でキャピラリ先端にドロップを形成し、そのドロップがキャピラリから離脱した際の体積から界面張力を算出する。ドロップ層の押し出し速度を制御することにより、界面形成時間1秒を下回るスケールの動的界面張力を測定できる。

メリット:秒以下の表面寿命(界面形成時間)スケールの界面張力を測定できる、繰り返し測定が早い
デメリット:液体の密度値が必要

DVT50

 

 

測定原理と対応可能なサンプル物性

各種測定原理とサンプルの粘度、界面形成時間、表面/界面張力の対応表です。
その他物性や測定条件などによっても変わるため、おおまかな目安とお考えください。

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method_comparison_surfaceage
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KRUSS社の代表的な表面張力計

【KRUSS社】

本社をドイツに置くKRUSS(クルス)社は、世界トップシェアを誇る表面張力計・接触角計のリーディングカンパニーです。他に泡試験機も取り扱っており、界面科学分野の発展に貢献しています。

創業200年を超える老舗企業であり、一貫して機能性と操作性の両方を追求したモデルを開発してきました。これまで培ってきた確かな技術力と豊富な知見により、世界各国のあらゆる産業分野で圧倒的な導入実績を誇っています。

日本国内においても、高い測定精度を誇るハードウェアと、日本語対応で操作性抜群のソフトウェアなどが好評で多くのお客様に選ばれています。

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【ウィルヘルミー法・デュヌイ法】表面&界面・静的 

KRUSS社が培ってきた技術を集約した革新的な表面張力計です。
カスタマイズ自由のモジュール構造をしているため、精度違いの天秤を選んだり、CMC(臨界ミセル濃度)や接触角オプションを付けたりと、必要機能のみを備えた測定システムを構築できます。各機能は必要に応じて後から追加することも可能です。
仕様に応じて、PCに接続して使用したり、スタンドアローンで使用したりすることができます。

素早い測定が可能な簡易的な表面張力計です。
PC不要のスタンドアローンタイプで、測定結果は本体上のディスプレイ上に表示されます。
測定結果はオプションのプリンターで印字したり、PCに接続して記録したりすることができます。

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【バブルプレッシャー法】表面・動的 

BP100 動的表面張力計

最短で表面寿命5msからの実測が可能なハイエンド動的表面張力計です。
高精度な解析が可能なガラスキャピラリのほか、洗浄が困難なサンプル用のディスポーザブルキャピラリのご用意もあります。
静音コンプレッサーを内蔵しているため外部ガスの供給が不要で、電源があればどこにでも設置することができます。

BPT Mobile(BPTモバイル) ハンディ動的表面張力計 

コンプレッサー内蔵に加えてカラータッチモニターとバッテリーの搭載により、現場で素早く簡単に測定を行うことができるモデルです。
操作にPCは不要で、ハンディながら最短で表面寿命10msを誇るほか、得られたデータはPCに繋いで簡単にエクスポートすることができます。

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【ペンダントドロップ法】表面&界面・静的 

ペンダントドロップ法に最適なモデルで、液滴作成~測定までを全自動で行います。
液量や押し出し速度などの変更が可能で、経時変化も任意の時間、任意の時間間隔で測定することができます。
接触角計としての機能を高めたい場合は、上位モデルの全自動接触角計DSA30やDSA100がお勧めです。

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【スピニングドロップ法】界面・静的 

ウィルヘルミー法やペンダントドロップ法では測定が難しい1mN/m以下の超低界面張力を精度よく測定可能なモデルです。
キャピラリ式なので必要液量は1ml程度と少なく、また、電熱式温調システムを搭載しているため循環水槽がなくとも温調が行えます。

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【ドロップボリューム法】界面・動的 

秒スケール以下の動的界面張力を測定可能なモデルです。
サンプルを装置にセットすれば、後は設定した表面寿命に自動的に変化させながら界面張力を測定することができます。
液体が触れるパーツはすべて取り外して洗浄することができるため、コンタミを抑えた測定が可能です。

 

仕様一覧

基本的な仕様の場合であり、オプションによって異なります。記載のない仕様についてはお問い合わせください。
 
型番 Tensiio K20 BP100 BPT Mobile DSA25 SDT DVT50

測定原理

ウィルヘルミー法
デュヌイ法

バブルプレッシャー法
(最大泡圧法)
ペンダントドロップ法
(懸滴法)
スピニングドロップ法 ドロップボリューム法 

表面or界面

静的or動的

表面&界面

静的

表面

動的

表面&界面

静的

界面

静的

界面

動的

界面形成時間
(表面寿命)
数十秒~
5~200,000ms 10~30,000ms 数秒~ 数秒~ 0.265~1,985µL/min
(シリンジ押出速度) 

表面張力 -測定範囲

    -分解能

1~2,000mN/m

0.001mN/m

1~999mN/m

0.01mN/m

10~100mN/m

0.01mN/m

10~100mN/m

0.1mN/m

0.01~2,000mN/m

0.01mN/m

10-6~2,000mN/m

10-6mN/m 

0.1~100mN/m

0.001mN/m

温調

 -10~+300℃

 -10~+130℃  -10~+130℃ - -30~+400℃  -10~+120℃ -10~+90℃
ソフトウェア
「ADVANCE」
・日本語を含むマルチ言語切り替え
・人間工学に基づく分かりやすい固定式レイアウト
・エクセルやPDFへのデータ出力
・130種類を超える豊富な物質データベース
不要
「LabDesk」
・軽快な操作性
・エクセルへのデータ出力
・130種類を超える豊富な物質データベース
不要
「ADVANCE」
・日本語を含むマルチ言語切り替え
・人間工学に基づく分かりやすい固定式レイアウト
・エクセルやPDFへのデータ出力
・130種類を超える豊富な物質データベース
「LabDesk」
・軽快な操作性
・エクセルへのデータ出力
・130種類を超える豊富な物質データベース
本体サイズ
W290mm
D360mm
H560mm
W270mm
D350mm
H430mm
W300mm
D390mm
H585mm
W85mm
D55mm
H220mm
W610mm
D250mm
H430mm
W360mm
D240mm
H325mm
W240mm
D300mm
H495mm
本体重量 29kg 11kg 13kg 0.6kg 10kg 15kg 13kg
電源 100V、40W 100V、40W 100V、40W バッテリー式
(2.5W、10時間駆)
100V、100W 100V、250W 100V、10W
使用環境
(結露なきこと)
15~30℃
15~30℃ 15~30℃
5~60℃
15~40℃
15~30℃
-

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